ADSLはここ数年間で家庭用のブロードバンドとして爆発的に普及しています。
ここでは、出題のキーワードとなる言葉を並べてみましたので、
参考にして下さい。
参考:ネットワーク早分かり講座:ADSLの基礎技術と最新拡張規格(キーマンズネット)
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index
★総論(ADSLとは)
★ADSLの特徴
メリット
デメリット
★サービスによる分類
(1)NTT・フレッツ型
(2)ホールセール型
(3)独自サービス型
★使用機器
★通信方式
★ADSL導入後の留意点
★G.992
(1)
G.992.1
(2)
G.992.2
(特徴)
★Annex ○ とは
(ヨーロッパと日本の違い)
Annex A
メリット
デメリット
Annex B
Annex C
ISDNの影響を受けにくくするしくみ
DBM (Dual Bitmapモード)
DBMのメリット/デメリット
★PPPoE (PPP over Ethernet)
★PPPoA (PPP over ATM)
★高速化技術
・S=1/2
・オーバラップ技術
・ダブルスペクトラム技術
ADSLに出てくる単語(すべてわかりますか?)
ADSL
ADSL Lite
ADSLモデム
Annex
Annex A
Annex B
Annex C
DBM
DF フラグ
DMT
DSLAM
G.992
G.992.1
G.992.2
G.dmt
G.Lite
High-Pass Filter
MSS
MTU
Low-Pass Filter
Path-MTU-Black-Hole現象
PPPoA
PPPoE
QAM
S=1/2
Splitterless ADSL
オーバラップ技術
簡易版ADSL
スプリッタ
ダブルスペクトラム技術
ハーフレートADSL
フルレートADSL
ホールセール型
リードソロモン符号
★総論(ADSLとは)
・ADSLとはAsymmetric Digital Subscriber Line(非対称デジタル加入者線)の略。
・音声通話が利用していない500kHz〜1MHzという比較的高い周波数帯域を利用してデータ通信を行う。
・インターネットをしながら電話・FAXを使用することが可能。
・音声通話とデータ通信をスプリッタで切り分けを行うことにより、周波数帯域によって 電話とモデムにデータを振り分けている。
★ADSLの特徴
・上りと下りの速度が違う。
・一般の電話回線で利用している電話線(メタリックケーブル)を利用したサービス。
・ベストエフォート型
最大速度は、ADSLに理想的な環境の場合であり、
・NTTの回線品質
・NTT交換局からの線路長
・利用者宅内環境
など、様々な条件や状況により
・理論値よりも低い速度でしか接続を確立できない
・全く接続が確立できない
・開通後に接続できなくなる
場合があるので注意する。
メリット
・初期費用が安い(導入に大がかりな設置作業が必要ない)
・電話回線との共有ができる
・手軽に導入が可能
デメリット
・比較的ノイズに弱い。
(近隣でISDNなどを利用されていたり、電話回線にノイズが乗るような環境では、使用が困難。)
・パソコンの性能や、パソコンの設定によっても、速度が大きく左右する。
・電話局からの距離により通信速度が影響を受ける。
★サービスによる分類
ADSLサービスには大きく分けて3つのタイプがある。
(1)NTT・フレッツ型
・フレッツ・ADSLが該当。
・IP通信網を使った独特のサービス形態でNTTはADSL回線のみを担当。
・プロバイダーはユーザーが提携各社から選び、いつでも変更可能。
(2)ホールセール型(各家庭〜電話局間をADSL回線で繋ぐサービスのみを提供)
・NTT東西、ACCAネットワークス、イーアクセスなどがその代表例。
・ISP(Internet Service Provider)とADSLサービス会社が別。
・ADSLサービス会社+プロバイダーと契約する必要がある。
(大手プロバイダー等ではプロバイダーのサービスメニューとして
ADSLサービスを用意している場合が多い)
(3)独自サービス型(ADSLサービス会社がプロバイダーサービスも一緒に提供)
・YAHOO BB、 ODN、DIONがその代表例
・既にADSLを利用している人が他社のADSLサービスに変更する場合、
現在の契約を解約する必要があり手続きが煩雑
切り替えに要する期間ADSLが使えなくなる
など不都合が出るので注意が必要。
★使用機器
・スプリッタ
高周波信号を通過させるフィルタ(High-Pass
Filter)
低周波信号を通過させるフィルタ(Low-Pass
Filter)
から構成。
音声信号、FAXなどは低周波信号を通過させるフィルタに接続し、
パソコン側(ADSLモデム側)は高周波信号を通過させるフィルタに接続する。
交換局にも設置されている。
・ADSLモデム
・ADSLに接続するために必要となる変復調装置。
・通信方式はDMT方式。
・DSLAM
・Digital Subscriber Line Access Multiplexerの略。
・DSLサービスにおいて,電話局内に設置される。
・数十〜数百回線の加入者線を収容し,帯域をまとめてアップリンク回線に伝送する
機能を持った集合型のDSLモデム装置。
・DSLサービスには不可欠の存在。
・LANカード
・LANケーブル
★通信方式
ADSLの通信方式はDMTが良く利用されている。
DMT (Discrete Multi-Tone)
・使用帯域を約 4kHz毎に256分割して,それぞれの周波数のチャンネル(bin,搬送
波)にQAMで 変調したデータをのせて伝送する。
(特徴)
・ノイズに強い
理由)
DMTによる通信開始時にトレーニング動作を行い,各チャンネルの状態に応じて,伝送
密度を変えるため。
・QAM
[Quadrature amplitude modulation]
・DMTでの 変調方式で使用されている。
・直交振幅 変調あるいは直交位相振幅 変調とも言う。
・振幅 変調(AM)と位相 変調(PM)を組み合わせた 変調方式であり、
振幅と位相の両方の要素を変化させることによって、多くの情報を一度に伝送が可能。
★ADSL導入後の留意点
・ノイズ対策
(1)冷蔵庫やテレビなどの家電製品からは離して設置する。
(2)モジュラ-ジャックからの電話線は出切るだけ短くしてモデムとパソコンを繋ぐLANケーブルを長く使う
・Path-MTU-Black-Hole現象
ADSLでは、データ伝送途中でのセグメント分割エラーにより、データが破棄される
問題がある。
一度に転送できる最大Frame長は、データリンク層以下での伝送手段で
変わってくる。
例) Ethernet : 1518オクテット、 ATM:53オクテット
この中には、それぞれの層のHeaderも含まれるので、
IPデータグラムでの最大長さ、実データの最大長さなどは
Header長さを引いた値にしなければならない。
最大Frame長を超えるデータを送る場合には、データリンク層で、
Frameを分割する。
しかし、伝送路が変わるごとにpacket分割を繰り返していれば、
DATAは断片化され、また伝送効率も悪くなるので、TCPコネクション
を確立する際に、伝送路の中で一番"最大Frame長"が短くなる部分を
見つけ出し、そこに合わせる形でFrame分割を行っている
そこで出てくる問題が、Path-MTU-Black-Hole現象なのだが、
まず、"MTU"、"MSS"、"DFフラグ"の用語を理解しておかないと
この現象は理解できないので、これらを先に説明する。
MSS(Max Segment Size)
一度に送れる実DATAの最大長さ。
TCPコネクション確立時に情報をやりとりする。
MTU(Maximum Transmission Unit)
一度に送れるIPデータグラムの最大長さ
DF(Dont Fragment:分割禁止) フラグ
字の如く、DATAの分割を禁止するフラグ。
○Path-MTU-Black-Hole現象により、DATAが破棄される流れ
@Clientから、Serverに対してTCPコネクションは張る際に、
自分のMSSを通知する。
図1のように
Ethernetでの最大Frame長 : 1518オクテット
Ethernet Header : 14オクテット
IP Header : 20オクテット
TCP Header : 20オクテット
FCS(Frame Check Sequence) : 4オクテット
なので、
MSSは 1518-14-20-20-4 = 1460オクテット
A接続先Serverは受取ったパケットのMSS(1460)は、
自分の認識しているネットワークで使用しても問題ないので、送られてきたMSS(1460)で通信する。
(通常はEthernetであればMTU1500byteなのでIPヘッダーを引いた値の1460byteが
MSSとなる。)
B接続先ServerはClientからの大きなDATAを送る際、
データを伝送可能である最大値のMTU 1500byte(MSS 1460byte)のパケットで分割し、
DF(don't fragment)のフラグ(フラグメント化されないように通常付けられるもの)を付
けて送ろうとする。
LANでの通信ではこれで問題は発生しない。
PPPoE区間の場合は、Ethernet headerとIP Headerの間に、PPPoE
Header(8オクテット)とPPP Header(2オクテット)
追加される。(図2)
よって、PPPoE区間だけ、MTU=1492、MSS=1452オクテットとなれば、問題ないのだが、
TCPコネクションを張るのはクライアントであるため、 MTU 1500byte(MSS 1460byte)で張ってしまう。
さらに、DFフラグを立ててしまっているので問題が発生する。(図3)
Cクライアントから1460オクテットで分割されて送れれたデータはBroadband
Routerに入る。
DPPPoE区間では、MSS=1452オクテット<1460オクテットなので、送れない。
送るためには、さらにフレーム分割をしなければいけないが、BでDFフラグが立ってしまっているので、
フレーム分割が出来ない。
Eこの場合、Frameは送信エラーになり、破棄される。
解決方法
この問題の解決方法は下記がある。
1) Broudband Router の配下につながっている外部と通信するLAN内端末(図でいうClient)
のMTUサイズを1492オクテットに設定変更する。
2) TCPコネクションを張る際、Broudband
RouterはMSSを1460に書き換える。
★G.992
ADSLの技術仕様は国際電気通信連合(ITU-TS)によってG.992として標準化されている。
(1) G.992.1
・"G.dmt"や"フルレートADSL"と呼ばれる、ADSLの技術仕様。
・最大で下り8Mbps、上り640Kbpsの通信速度を実現できる。
・1999年6月に国際電気通信連合(ITU-TS)によって標準化された。
下りのデータ伝送に分割された周波数帯域を223個使用。
一つの帯域には4,000ボーの 変調速度で最大15ビットが割り当て。
1回の 変調で
4000 × 15 = 60,000 ビット
のデータを転送することが可能。
よって、理論上の伝送速度は
60,000 × 223 = 13.38Mビット/秒
となる。
ただし、この値はあくまでも理論上の上限であり、実効速度はこの伝送速度より遅くな る。
(2)G.992.2
・"G.Lite"や"ハーフレートADSL"と呼ばれる、ADSLの技術仕様。
・"G.Lite"は、G.992.2という正式な規格(勧告)番号がつく前に使用されていた名前。
・規格案の段階では
「簡易版ADSL」 「ADSL Lite」 「Splitterless ADSL」
などと呼ばれていた時期もある。
・最大で下り1.5Mbps、上り512Kbpsの通信速度を実現できる。
・1999年6月に国際電気通信連合(ITU-TS)によって標準化された。
(特徴)
特徴としては、
(i)下り最高速度を1.5Mbpsまでに抑えた(簡単に実現できる)
(ii)宅内スプリッタが不要(宅内配線が簡単になる)
(iii)ファーストリトレインと消費電力削減の機能を持つ
下表にG.992.1(G.dmt)とG.992.2(G.lite)を整理する。
ADSLの方式 |
キャリア |
割り当て |
下り速度の上限 |
上り速度の上限 |
G.992.1 (G.dmt) |
138〜1104KHz
で223個 |
最大15ビット |
8Mbps程度 |
640 kbps |
G.992.2
(G.lite) |
138〜552KHz
で95個 |
最大8ビット |
1.5 Mbps |
512 kbps |
★Annex ○ とは
・Annexというのは、ITU-Tの規格(勧告)書の付属書類のことを指し、
本体の規格と一部異なる規格や付録となる資料が書かれている。
・G.dmt/G.lite(G.992)の規格書では、
Annex Aで北米向けの規格
Annex Bでヨーロッパ向けの規格
Annex Cで日本向けの規格
を定めている。
ADSLの方式 |
日本のISDNからの干渉を防ぐ仕組み |
仕向け |
Annex A |
なし |
北米向け |
Annex B |
なし |
ヨーロッパ |
Annex C |
あり |
日本 |
(ヨーロッパと日本の違い)
・ISDNの使っている帯域が
欧州---約 90 kHz 迄
日本---約 320 kHz 迄
・日本の広いISDN帯域幅のゆえに,混信が顕著となり,
ADSLとISDNを共存させられなかったので, Annex C 仕様となった。
・欧州の Annex B は,ADSLとISDNを共存させている。
Annex A〜Cについて、もう少し詳細にまとめる。
Annex A
・アメリカなどで使用されている方式
・日本では、Yahoo!BBが採用
メリット
・世界的に同規格が多いため機器の調達は容易で、業者にとってはコスト削減ができ、価格勝負が可能。
デメリット
・ISDNとの相性はすこぶる悪い
・Annex Cと比べて他回線の無干渉時でさえも減衰量が多い。
Annex B
・欧州仕様の規格。
・日本のADSLでは導入されていない。
Annex C
・ACCA(アッカ)が日本で初めて導入した8Mbpsサービス。
・日本のISDNに対応した日本独自仕様
・日本のISDNは周期的に強力な信号を出すので、それが周囲のADSL回線にもノイズとなって影響。
・対応機器を揃えねばならないので若干コスト高になる。
ISDNの影響を受けにくくするしくみ(DBM)
DBM (Dual Bitmapモード)
@、Aを使い分けて、ISDNの影響を受けにくくしている。
@ISDN信号が強いタイミング(NEXTタイミング)では転送するデータ量を減らして
でもISDN信号の影響を受ける音をなるべく使わない
AISDNが弱いタイミング(FEXTタイミング)では通常どおりの転送を行う
DBMのメリット/デメリット
メリット
・ 転送が安定する
・ 下り速度が現状よりも向上する
デメリット
・ 最高速度が下り3,424kbps、上り416kbpsに制限される
DBMを使用することにより、下記の場合に効果がある。
・ 回線距離が長く(目安としては直線距離で2km、回線距離で3.6kmくらい)、ISDNの影響が強い
・ 速度が非常に遅い(目安としては下り1Mbps前後)
★PPPoE (PPP over Ethernet)
PPPの手順をイーサネット上で実行するための規格。
PPPoEクライアントと交換局内のPPPoEサーバ間でPPPセッションを確立。
PPPセッションを確立する動作は,次のようになる。
@PPPoEクライアントはPADI(PPPoE Active Discovery Initiation)パケットをブ
ロードキャストする。
APPPoEサーバは、PADO(PPPoE Active Discovery Offer)パケットでPPPoEサー
バのMACアドレスを返す。
BPPPoEクライアントはPADR(PPPoE Active Discovery Request)パケットを送
信する。
CPPPoEサーバは,PADS(PPPoE Active Discovery Session-Confirmation)パケッ
トでセッションIDを返送し,PPPoEセッションを確立する。
DPPPoEクライアント、PPPoEサーバは,LCPパケットでリンクの確立を行う。
EPAP/CHAPなどによる認証を行う。
FIPCPパケットによってIPアドレスを取得する。
GPPPセッションを確立し,IP通信を開始する。
・もともとはDSLサービスの利用者とサービスを提供する通信事業者の便宜を向上させるために、
米国の大手通信事業者UUnetや機器ベンダーのレッドバックネットワークスにより考えられた技術。
・RFC2516として標準化。
★PPPoA (PPP over ATM)
・ATM(非同期転送モード)を使いインターネットに接続する技術。
・PPPoEと比べるとPPPoAを採用している業者は少ない。
・Yahoo!BBで採用。
★高速化技術
8Mbpsを超える高速通信サービスが増えてきているが、
それを実現させている技術について紹介する。
・S=1/2(エスイコールニブンノイチ)
・G.992.1のオプション仕様の一つ。
・誤り訂正符号のデータ量を削減して通信速度を向上させる技術。
・一つの信号に従来より多くのデータを載せることが可能となる。
・G.992.1ではリードソロモン符号という誤り訂正符号を採用。
この符号の特徴として、
訂正を可能とするビット数が長いほど誤り訂正符号のビット数も長くなる。
この訂正ビット数をG.992.1で規定されている値(S=1)の半分に抑え、
その分をデータ本体の転送に割り当てる技術。
・S=1/2技術を使用したADSL回線では、理論上は最高で16Mbpsでの転送が可能。
(実際は信号の減衰や他の回線からの干渉があるため、実質10Mbpsから12Mbps
程度)
・オーバラップ技術
上りの周波数帯域を下りの通信にも利用する技術
・ダブルスペクトラム技術
・下り最大使用周波数帯域1.1MHzから2.2MHzなどにを拡大する技術。
・G.992.1 Annex Iで採用。
参考サイト
ネットワーク早分かり講座:ADSLの基礎技術と最新拡張規格(キーマンズネット)
ネットワーク早分かり講座:TCP/IP最下層と拡張する最新ADSL
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