問1 LANを使ったシステムの再構築に関する次の記述を読んで、次の1〜4に答えよ。
F社は全国に支社をもつ貨物運送会社で、全社システムは東京本社のホストコンピュータ
(ホスト)を中心に構築されている。各支社にはホスト専用の端末(ホスト端末)が設置されて
おり、一定規模以上の支社にはLANが敷設されている。
H支社はF社の中では中規模の支社であるが、美術品や精密機械など特別貨物の取扱いが
多い関係上、独自システムの要求が強い。そのためH支社では独自の部門コンピュータを設
置し、それを使った特別貨物輸送追跡システム(特別貨物システム)を支社で利用してきた。
図1は現在のH支社のネットワーク構成である。
図1 現在のH支社のネットワーク構成
H支社では現在、特別貨物システムの見直しを行っている。また、一部の部門が別のビル
(H支社分室)に移転することになっており、LANを分室にも延長する必要がある。さらに、
本社や海外の提携貨物運送会社からの情報をwwwを用いて取得したいと考えている。これ
らの背景から、H支社では、特別貨物システムの再構築とH支社分室へのLANの拡張、www
を利用するために必要なインターネットサービスプロバイダ(ISP)への接続を同時に行う方
針を新システム移行推進会議で決定し、図2のようなシステム再構築案を作成した。
図2 H支社のシステム再構築案
[システム再構築案の説明]
(1)全社システムとの関係
今回のシステム再構築では、基本的に全社システム側の変更は行わない。しかし、全
社システムのオンライン利用については、ホスト端末をパソコンに置き換えて、その中
の20台をエミュレータソフトを利用してホストと通信する構成に変更する。なお、部門
コンピュータとホスト間で行っているファイル転送は、サーバとホスト間に変更される
が、現在と同じ通信手順で通信処理装置を経由して行う。
(2)新システムの構成
部門コンピュータおよびその専用端末を全面的に置き換え、サーバ(1台)とパソコン(当
初100台)を新規に導入する。サーバとパソコン間の通信手順は、TCP/IPを採用する。サー
バは1台とし、現在の部門コンピュータのあるエリアに設置する。パソコン台数は、業
務拡張に伴い、将来は160台まで増設できるようにする。
(3)現オフィスのLAN
現オフィスは新規のケーブル敷設をせず、全社システムで利用しているシステムを利用す
る。図2のように、パソコン(当初100台)はハブ(10BASE5のアタッチメントユニットイン
タフェースを複数の10BASE-Tに変換するマルチポートリピータ)を介して、変更のLANケー
ブルに接続する。
(4)分室のLAN
分室には、現オフィスと同様のCSMA/CD方式のLANを敷設する。LANには、パソコン
(当初25台)がハブ経由で接続される。異動する部門の業務の関係から、当面はホスト系業
務は分室で行わない。
(5)両オフィス間の接続
両オフィスのLANは、ルータ1、ルータ2を経由して64kビット/秒の専用線を介して接
続する。
(6)ホストと通信制御装置間の接続
この通信は64kビット/秒の専用線を利用する。専用線上のホスト伝送手順は、HDLC
を利用した全二重通信を採用し、伝送効率80%で設計している。この数値は、HDLC手順
を用いた専用線上での理論的な上限値とほぼ等しい。
(7)wwwへの接続
ISPには、ルータ0を経由して128kビット/秒の専用線を介して接続する。
[調査]
(1)サーバとパソコン間のスループット
CSMA/CD方式のLANは、図3のような遅延特性を示すことが分かっている。横軸の利
用率は、1秒間にLAN上に伝送されるデータ量とLANの伝送速度との比較である。また、
同等のシステムでパソコン10台とサーバ1台によるプロトタイプ評価を行った結果、パソ
コン1台当たりのスループットは、30kビット/秒とすればよいことが分かった。LAN上
のデータのパケット長は、実データがないので、64バイトと仮定した。ここでいうスルー
プットとは、LANを利用するノード間で1秒間に伝送されるデータ量の設計目標値のこと
をいう。
(2)LANの性能
10BASE−TではCSMA/CD方式でネットワークにパケットを送出しようとして【
a 】
を検出すると、一定時間後に再度送信を行う。このことから、パケット長を短くすれば
するほど回線利用率が増加し、LANへのアクセス回数が増大する。このため、ますます
【 a 】の回数が増え、【 b
】が極端に悪化していく(A)。
【 c
】が長くなれば同一の負荷に対してパケット数が減るので、【
a 】の確率
が減少して【 b
】が良くなる。したがって、図3の【 d
】の曲線が64バイトで
伝送したときの関係を示していることが分かる。この曲線は、利用率が0.2を超える時点
から【 b
】が悪化していることから、限界利用率は0.2、つまり【
e 】ビット
/秒がLANの最大スループットであることが分かる。これにより、LANに接続できるパ
ソコン台枚は最大【 f 】台となる。
図3からはパソコンの最大接続数は、パケット長に比例して増加することが分かる。CSMA/
CD方式の最小パケット長は64バイトであり、実際のパケット長は先頭にある8バイトの、
【 g 】を付加するため64バイトより長くなる。以上のことから、64バイトで見積も
ることでスループットの安全性が確保される。
(3)LAN上のホスト通信手順について
ホスト通信手順とTCP/IPは、MAC副層から下位の層に関して同一のプロトコルを採用
し、同一LAN上で混在させて運用している実績がある。LAN上でのホスト通信手順の平
均パケット長は、1,200バイト程度であることが分かっている。
(4)ホスト通信手順のLAN上のスループットについて
図2では、ホストとの通信はホストと通信処理装置間の回線がボトルネックになると推
定できる。したがって、通信処理装置とエミュレータによってホスト端末になるパソコ
ン、サーバ間のスループットは、ホストと通信処理装置間の回線におけるスループット
で抑えられる。
(注) 3本の線は、平均パケット長が、64バイト、256バイト、
1024バイトのいずれかを示す
図3 CSMA/CD方式のLANの遅延時間特性
設問1
本文中の【 a 】〜【 g
】に入れる適切な字句または数値を答えよ。
設問2
図2の構成で、本文中の[調査](2)の(A)の現象が発生するかどうかを推定したい。
図2で想定される通信スループットの全体を考え、次の各問いに答えよ。
(1)[調査](3)(4)から、サーパおよびエミュレータによってホスト端末になるパソ
コンと通信制御装置間の通信スループットの総和を考え、その上限値を求めよ。
(2)[調査](1)からサーバと現オフィスのパソコン間の通信について、スループッ
トの総和を考え、その上限値を求めよ。
(3)サーバと分室のパソコン間の通信について、スループットの総和を考え、その上
限値を求めよ。ここで、ルータ間の伝送効率は全二重で100%とせよ。
(4)図2に示したLAN構成で、(A)の現象が通常運用時に発生するかどうかについて、
理由と共に70字以内で述べよ。
設問3
新システム移行推進会議の中で、「新システムのLANではネットワーク上のパソコ
ンの平均応答時間が良くない可能性がある」との指摘があった。そして、この指摘に
関する検討が行われることになった。
(1)このような「指摘」がなされた理由について、CSMA/CDの伝送特性に着目して、
60字以内で述べよ。
(2)ネットワークスペシャリストの立場から考えられる対応策を二つ挙げ、それぞれ
30字以内で述べよ。また、それによって期待される効果についても、それぞれ30字
以内で述べよ。
設問4
wwwを利用するために必要なインターネット接続に関する次の各問いに答えよ。
(1)F杜では,JPNIC(Japan Network Information Center)からクラスCの割当てを一つ
しか受けておらず、F牡全体では、約500の端末やパソコンが設置されている。この
ような利用環境でイントラネットと接続するために、図2の(B)の位置にある装置を
設置した。できるだけ下位層で実行する場合、この装置の機能は何か答えよ。また、
その役割は何か答えよ。
(2)H支社では、イントラネットと接続するためにグローバルアドレスを取得した。
インターネットとの接続を行うために、このグローバルアドレスに対応しで登録す
べきものを答えよ。
----------(回答)----------
設問1
a:衝突、コリジョン
b:応答時間、レスポンス、遅延時間、遅延時間特性
c:パケット長
d:@
e:2M
f:66
g:プリアンブル
設問2
1)51.2kbps
2)2Mbps
3)64kbps
4)問題があいまいで回答が出来ない。
設問3
1)100台以上のパソコンが同一セグメントにあるため、衝突が多発し、再送や待ちが発生する。(44)
2)対策案
1:スイッチングハブを導入する。(14)
効果:セグメントが分割でき、スループットが向上できる。(25)
対策案
2:LANの通信速度を100Mbpsに上げる。(21)
効果:通信時間を短くすることにより、待ち時間が減少できる。(26)
設問4
1)機能:NAT
役割:グローバルIPアドレスとプライベートIPアドレスを変換する。
2)ドメイン名
----------(解説)----------
設問1
a,b,c,dは割愛
e: 10BASE-T
は10Mbps。10×0.2(限界利用率) = 2Mbps
f:調査(1)より、スループットは30kbps。
2×10^6(bps) / 30×10^3(bps) = 66.67(台)
67台では超えてしまう。
g: プリアンブルとは…
CSMA/CDでは、パケットの前に101010…を64ビット(8バイト)付けて、リズムを付ける。
端末間で完全に両側の同期をハードのみで合わせるのは難しい(お金がかかる)ので、このプリアンブルで
リズムを合わせている。盆踊りでの始めのたいこみたいなものでしょうか。
設問2
1)通信回線の伝送速度とスループットの総和を比較する。
通信回線の伝送速度
64kbps × 0.8 = 51.2kbps
スループットの総和
1,200 × 8 × 20 = 192,000 = 192kbps
51.2kbps ≦ 192kbps
通信回線の伝送速度(51.2kbps)が上限となる。
2)通信回線の伝送速度とスループットの総和を比較する。
LANの伝送速度
10kbps × 0.2 = 2Mbps
スループットの総和
30,000 × 8 × 100 = 2,400,000 =
2.4Mbps
(通信量はオンラインとして利用する(1,200バイト)より、PCとして利用する(30kバイト)方が
多いので最悪の場合を考えて、PC×100台として計算する。)
2Mbps ≦ 2.4Mbps
LANの伝送速度(2Mbps)が上限となる。
3)通信回線の伝送速度とスループットの総和を比較する。
通信回線の伝送速度
64kbps × 1.0 = 64kbps
スループットの総和
30,000 × 8 × 25 = 750,000 =
750kbps
64kbps ≦ 750kbps
通信回線の伝送速度(64kbps)が上限となる。
4)100台のPCが同時にエンターキーを押すと、全問のようにボトルネックが発生するが、
実務上、そのようなことがありえるのかどうか、明記されていないので回答できない。
設問3
1)LAN上で応答時間の悪化が問題になる原因は
・コリジョンの多発によるスループットの悪化
・通信速度不足によるボトルネックの発生
である。
2)その対策をネットワークスペシャリストの立場で問われている。
「データ量を減らす」はDSP(データベーススペシャリスト)、AE(アプリケーションエンジニア)の仕事なので、
この内容は問われていない。
1)の原因を対策し、それでの効果を書けばよい。
・コリジョンの発生を減らすにはコリジョンセグメントを分割すればよい。
→ブリッジ、スイッチングハブの導入
・10BASE-Tを使用してるなら100BASE-TXに変更すればよい。
設問4
1)
クラスCのホストアドレスは254個。500の端末に割り当てるのは不可能である。
この環境でインターネット接続するために、グローバルアドレスとプライベートアドレスを変換するNAT機能がある。
この機能についての講義内容 => NAT機能についての講義内容
2)インターネット接続に必要なもの
・IPアドレス(割り当て)
・ドメイン名(登録)
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