テクニカルエンジニア(ネットワーク)過去出題問題

 平成10年 午後1 問1

最終更新日 2004/01/24
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Tomのネットワーク勉強ノート
 過去問(午後)
   テクニカルエンジニア (ネットワーク)過去問(午後)
     テクニカルエンジニア(ネットワーク)過去問 平成10年 午後1 問1

問1

多重化装置を用いた広域ネットワークの切替えに関する次の記述を読んで、設問1〜4に
答えよ。

建設機材のレンタル及びリース業を営むS社は、東京に本店があり、大阪及び名古屋に支
店がある。S社は10年程前に本店と大阪支店にホストコンピュータ(以下、ホストという)
を1台ずつ設置し、業務システムを構築した。そのときの広域ネットワークは、本店ホスト
と名古屋支店端末を結ぶ回線のほか、本店ホストと大阪支店ホスト間通信回線、本支店間の
音声回線及びLAN間通信回線を時分割多重化装置(以下、TDMという)に収容し、高速デ
ィジタル回線で中継伝送するものであった。さらに、大阪の取引先会社にも端末を置いて、
アナログ専用線で大阪支店ホストと接続していた。ホストと端末間の伝送制御手順は、S社
内及び取引先会社ともHDLC-NRMである。しかし、最近、TDMメーカU社は、S社使用
のTDMを近々製造中止するので、増設や保守が困難になることを通知してきた。併せて、
後継機種としてATM伝送に対応した機器(以下、ATM装置という)を提案してきた。U社
の提案書の一部を次に示す。

S社殿向けATM装置について

(1)ATMは、ユーザデータの発生に応じて、ヘッダを付与したセルと呼ばれる固定長
  の情報ブロックを送出する方式(ATM多重)で、パケット多重やフレーム多重の仲間の
  一つに数えられます。x.25やフレームリレーは、可変長の情報ブロックを扱い、情報転
  送における遅延に【 a 】があり音声や動画が途切れる現象が出ることがありますが
  、ATMでは【 a 】を小さく抑えることができます。

(2)ATMは伝送品質を設定するための【 b 】が規定されており、回線の使用効率
  を高める統計多重効果が期待できます。国際標準としては、固定ビットレートや可変ビ
  ットレートなどがあります。音声やデータのように異なる種類の情報が混在している場合
  でも、適切な【 b 】の設定によって、経済的な回線容量設計が可能です。

(3)弊社のATM装置はATM多重のほか、従来のTDMと同様の多重方式も可能
  で、現在のネットワークからの移行も容易です。ATM多重においては、ATMレイヤと
  上位レイヤとの間において、セルの分割組立て及び転送エラー処理などの機能をもつ
  【 c 】レイヤが扱うプロトコルタイプ5が適用できます。【 c 】レイヤのプロトコルタ
  イプ5は、ユーザ情報に8バイトのトレーラを付加し、更に全体で48バイトの整数倍にな
  るようにデータ長を調整し、空白部分を意味のない情報で埋めます。

(4)弊社のATM装置は音声圧縮機能も向上しており、従来のTDMの32kビット/秒に比較し、
  効率の良い8kビット/秒を実現可能です。

(以下、省略)

一方、S社は、業務の一層の効率向上と経費削減のため、ホストの統合を検討していた。
検討の結果、大阪支店ホストを撤去し、大阪支店の業務システムを本店ホストに統合するこ
とになった。このため、ホスト統合に併せて本店及び大阪支店にATM装置を導入すること
になった。
ホスト統合によって、大阪支店及び取引先会社の端末は本店ホストに接続されることにな
るので、システム部のK部長は、ネットワーク担当のT君に本店と大阪支店間の通信回線の
設計を指示した。T君の調査によれば、現在の本店と大阪支店間のTDMに収容されている
低速側の通信回線は表1のとおりであった。

表1 現在の本店と大阪支店間のTDM低速側通信回線の用途別速度と本数

用 途  通信速度(kビット/秒)  本数
本店ホストと大阪支店ホスト間通信 64  1
音声通信 32 4
LAN間通信 64 1

音声回線は、構内交換機(以下、PBXという)とTDM間にアナログインタフェースを用
いていた。また、大阪支店と名古屋支店との通話は、本店のPBXで中継交換していた。
ホスト統合に当たって、新たに大阪支店の端末を本店ホストに接続する回線、本店のホス
トで処理した結果を大阪支店に転送しプリントするための回線、及び取引先会社と通信する
ための回線の新設、更に本店と大阪支店間の音声回線の増設をする。本店ホストと大阪支店
ホスト間の通信回線は、統合完了後は不要になる。T君はホスト統合後のATM及びTDM低
速側通信回線について表2のように、また統合後のネットワーク構成を図のようにまとめ、
K部長に報告した。

表2 ホスト統合後の本店と大阪支店間の低速側通信回線の用途別速度と本数

用 途 通信速度(kビット/秒)  本数 収容方式
大阪支店内端末との通信 9.6 5 TDM
大阪支店向けプリント出力 384 1 ATM
音声通信 8 6 ATM
LAN間通信 128 1 ATM
取引先会社内端末との通信 9.6 1 TDM

  
図 ホスト統合後のネットワーク構成

T君の報告に対し、K部長はホスト統合のスケジュールを伝え、ATM装置の導入準備を
指示した。T君はU社技術担当者と打合せをした。その際、本店ホストと大阪支店内端末と
の通信について、T君は"TDMと同様の多重方式を用いるので大丈夫だろうね"と聞いた。
U社技術担当者は、"HDLCフレームの送出後の応答監視タイマ値を確認したい"と言った。
T君は、本店ホストのタイマ値の定義は大阪支店ホストの定義値をそのまま用いるつもりで
あったが、U社技術担当者は、"場合によっては値を変更しないと通信がうまくいかないケ
ースもあります"と言った。さらに、T君は"取引先会社内端末の回線を収容するときは、
モデムにおいて【 d 】の設定変更が必要だね"と確認すると、U社技術担当者は、"そのと
おりです"と答えた。


設問1

本文中の【 a 】〜【 d 】に入れる適切な字句を答えよ。

設問2 

ATM伝送における伝送効率に関する次の問いに答えよ。

(1)U社提案書第3項のプロトコルタイプ5において、ユーザデータ長が250バイトの
場合のセル数を求めよ。

(2)(1)の場合の伝送効率が何%になるかを求めよ。答えは小数以下を四捨五入して整数
で求めよ。ここで、伝送効率はセル中に占めるユーザデータの割合とする。

設問3 

大阪支店向けプリント出力時のセル送出速度を求めよ。ここで、プリント出力の転送
を固定ビットレートと考え、セル中に占めるユーザデータを47バイトとせよ。セル送出
速度は、毎秒送出できる最大セル数とする。答えは小数以下を切り上げて整数で求めよ。

設問4 

T君とU社技術担当者の打合せにおいて、U社技術担当者から"HDLCフレームの送
出後の応答監視タイマ値を、場合によっては変更しないと通信がうまくいかないケース
もあります"と言われた理由を60字以内で述べよ。

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