テクニカルエンジニア(ネットワーク)過去出題問題

 平成9年 午後2 問3

最終更新日 2004/01/24
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Tomのネットワーク勉強ノート
 過去問(午後)
   テクニカルエンジニア (ネットワーク)過去問(午後)
     テクニカルエンジニア(ネットワーク)過去問 平成9年 午後2 問3

問3

オンラインシステムの拡張と新規システム導入に伴うネットワーク再構築に関する次の記
述を読んで、設問1〜4に答えよ。

製造販売業を営むM社には、事業所として、東京本社と大阪本社を中心に一つの工場と全
国に12か所の物流拠点があり、全国の県庁所在地や主要都市に72か所の営業所がある。全
社1,800人の従業員のうち500人の営業担当者は、各営業所に分散配置されている。
図1にM社の現在の基幹システムの概要を示す。東京センタ(東京本社にある)と大阪セ
ンタ(大阪本社にある)では、ホストコンピュータ(以下、ホストという)による製品の製
造、販売、在庫、財務会計管理などの業務を運用し、月次の会計管理情報を出力している。
データベース管理システム(DBMS)は、階層型データベースを使用している。表1にトラ
ンザクション量と1トランザクション処理当たりの端末応答時間を示す。M社のネットワー
クは、東京センタと大阪センタ間に高速ディジタル回線、物流拠点、工場及びセンタ間に
アナログ専用回線、営業所とセンタ間にパケット交換網(X.25)を使っている。両センタで
は受発注データなどを送受信し、トランザクション処理を行っている。



図1 M社の基幹システム概要(現状)

表1 M社のトランザクション量と端末応答時間

  1日当たりの平均
トランザクション件数
1トランザクションのデータ量 
(上り下りとも)
営業所端末
での応答時間
東京センタ 826,500件 各715バイト 3〜5秒
大阪センタ 623,500件 各715バイト 4〜6秒

[基幹システムの拡張]
M社の情報システム部長であるK氏は、経営トップから図1の基幹システムを拡張し、
営業担当者が地域に密着したきめ細かい営業活動が行える"営業支操システム"の構築
を命じられた。K氏はネットワーク担当のF君に対し、K氏が考える"営業支操システム"
の具体化を検討するよう指示した。K氏が考える"営業支援システム" は次のとおりで
ある。
(1)営業担当者は営業所のパソコン(PC)からシステムを使用するだけではなく、携帯
型PCを持ち歩き、自宅や顧客先のある社外から直接システムにアクセスし、営業活動
報告の送信や必要な情報の受信ができる。具体的には訪問先、訪問結果、精算、在庫
照会、受注、手配などに必要なデータの送受信を行う。
(2)自宅の電話や公衆電話(ISDN対応)から簡単な操作でセンタに接続できる。
(3)社外からネットワークに接続するためのアクセスポイントを設ける。アクセスポイ
ントでは、蓄積交換型の中継処理が行われる。当初は、各都道府県につき1か所の営
業所をアクセスポイントとする。
図2に携帯型PCの回線接続例を示す。



図2 携帯型PCの回線接続例

その後、この"営業支援システム"はK氏の考えに沿った形で、基幹システムに機能
を追加して構築され、要望がある営業担当者に対して携帯型PCを配付して運用を開始し
た。

[情報系システムの構築]
M社の経営トップ(東京センタにいる)は、営業担当者が保有している顧客情報や商
談情報が個人情報となってしまい、それらの情報の質や活用度が個人に依存し、全社的
な情報として活用できていないと感じている。そのため、組織的な市場分析や経営観点
からの意思決定、タイムリな経営判断を阻害していると感じている。また、月次決算デ
ータとその時系列推移の作成時間を現状の20日間から数日に短縮し、タイムリな経営判
断に利用したいと思っている。
一方、情報システム部は数年前から"一人1台のPC装備"を推進してきた。M社に
PCが普及してきた状況を踏まえ、経営トップから社内業務の効率化を目指した新たな構
想が出てきた。この構想では、稼働中の基幹システムと新たに構築する"情報系システ
ム"を連携させ、物流拠点と営業所を含めた事業所間を新たなネットワークで結び、社
内業務の効率化や情報共有と経営トップヘの迅速な情報提供を目的としている。
K氏はF君とデータベース担当のG君を呼び、情報系システムの具体化に向け検討を開
始するよう指示した。指示を受けた両君は、営業所や物流拠点にはLANが導入されてき
ているので、情報系システムはクライアントサーバ形態のシステムとして構築する方針
で検討した。二人は検討した結果をK氏に次のように報告した。
(1)情報系システムの概略は図3のとおりで、ネットワークを介して全国の事業所を結
ぶ。センタのホスト間の回線は未定だが、センタと事業所間はISDN基本インタフェー
スのパケット交換サービスを利用する。



図3 情報系システムの構築案

(2)情報システムでは、次の機能を実現する。
@ 全国の従業員個々のメールや就業情報、事務手続などを電子化し、事務作業の効
  率化と情報共有を促進する。
A 日々の業務遂行の情報を抽出・分析し、これらを経営情報として経営トップに提
  供する。経営情報は経営トップの18人と全事業所の管理職87人を対象とし、その後
  情報を選別して一般従業員にも公開する。
B 両センタで扱う基幹システムのデータは、処理終了後に東京センタの情報系サー
  バに転送される。
C 事業所内のデータは事業所内で蓄積管理できるか検討する。

(3)クライアントサーバ形態のシステム機能配置は、表2の四つの方式が考えられる。
これらの方式をモデル化して比較し、応答時間、CPU負荷、構築期間、回線費用など
からM社にとって最適な方式を考える。

表2 クライアントサーバ形態のシステム機能配置

  方式1 方式2 方式3 方式4
クライアント側 ・プレゼンテーション ・アプリケーション
・プレゼンテーション
・アプリケーション
・プレゼンテーション
・データ管理
・アプリケーション
・プレゼンテーション

ネットワーク

サーバ側 ・データ管理
・アプリケーション
・プレゼンテーション
・データ管理
・アプリケーション
・データ管理 ・データ管理

[表2の前提条件]
データ管理 :関係データベース管理システム(RDBMS)を使用する。

ネットワーク :
SQL文、データ、制御情報などを転送する。

プレゼンテーション:
画面編集機能でGUI(Graphical User Interface)を実現する。
アプリケーション :プレゼンテーション及びデータ管理の各機能部と会話型でやり
取りを行い、ネットワーク上のデータ転送の効率化も実現する。
両君から報告を聞いたK氏は、裏付けとなる定量的データが少なく、検討が不十分だ
と思った。また、M社には全社的規模のクライアントサーバ形態によるシステム構築経
験がなく、各事業所にいる従業員のスキルも低い。そこで、K氏はM社の業務に沿うよ
うに表2の方式を絞り込むため、次の検討が必要と考えた。

(1)表2のクライアントサーバ形態のシステム機能配置を決めるため、データ管理とア
  プリケーション配置についてベンダから提案させ、これを参考に比較検討しシステム
  構成を決定する。

(2)システム構成を決定した後にパイロットシステム(先行検証システム)を構築し、
  システム評価データを取得する。
  K氏の指示を受けたF君は、早速、情報系システムの構築要件(ネットワークの詳細な
  データ量は除く)を取りまとめ、ベンダに提案を求めた。ベンダが提示したシステム機
  能配置の比較を表3に示す。

表3 システム機能配置に関する4方式の比較

 

長 所

短 所
方式1 アプリケーションがクライアント側に 
ないので、保守が容易。
アプリケーションがクライアント側にないの
で、操作性・運用性が低い。
方式2 アプリケーションが両側にあるので、
様々な形態のシステム構築が可能。
アプリケーションが両側にあるので、システ
ム構築の負担が大きい。
方式3 アプリケーションをクライアント側だ
けで構築でき、生産性が高い。
ネットワークを流れる処理結果のデータ量が
多い。ユーザ数が多いとサーバ側の必要資源
が増加。
方式4 事業所内データベースと全社データベ
ースの選択が可能。
データベースが同期更新方式の場合は応答時
間が長く、トラブル対応が難しい。

K氏は、経営トップが求める経営情報を提供するには46万件にのぼる顧客データベー
ス(顧客名、住所、氏名、性別、年齢、使用製品名、台数、営業訪問記録など)を構築
し、基幹システムからのデータを、顧客データベースに関連付けて統合する必要がある
と考えている。そこで、情報系システムのデータ管理の具体化を検討するようG君に指
示した。G君の検討によれば、顧客データベースの構築には多くの工数(人員×期間)
が必要となる。また、顧客データベースは変更頻度が少ないデータと変更額度が多いデ
ータからなり、1件のデータ長は8,000バイトで、SQL文でのアプリケーション作成の巧
拙が端末応答時間に影響すると予想した。
K氏はM社の業務に沿った定量的なシステム評価データを取得するために、四つの方
式についてパイロットシステムを構築するよう両君に指示した。両君が情報系システム
の構築に当たって検討した結果、一般従業員までを対象にした情報系システムにおいて、
大阪センタから情報系サーバに転送されるデータ量とアクセス特性を表4のように予測
した。

表4 情報系システムのデータ量と特性

[1日当たりのセンタ間の通信量]
大阪センタのホストからネットワークを介し、東京センタにある情報系サーバに転送
されるデータ量は、89.2×10^6バイト/日である。
[特性]
(1)データベースへの参照と更新のアクセス比率は4:1、事業所内データと全社デー
タへのアクセス比率は4:1と予測する。
(2)経験からピーク時の同時アクセス者数は、全体利用者の1/3とみる。

両君は顧客データベースを東京センタに構築した。そして、全国の平均と思われる福
島営業所からISDNパケット交換サービスを利用して、東京センタにあるデータベースを
更新する処理を対象に実測を行った(システム構成要素とアプリケーションの違いから、
方式2を更に形態1と形態2に分けた)。実測された処理時間、伝送時間及び応答時間を
表5に示す。M社でのパイロットシステムの構築や実測、更にベンダの提案書から情報
系システムの構築に関して分かったことを表6に示す。

表5 更新・参照処理1件当たりの処理時間と応答時間
                                   単位:秒

          処理時間・応答時間
         \ 
方式(方式名称)
クライアント
処理時間
ネットワーク
伝送時間
サーバ
処理時間
応答時間
更新 参照 更新 参照 更新 参照 更新 参照
方式1(リモートプレゼンテーション) 0.5 0.5 4.8 4.7 0.5 0.4 7.5 6.4
方式2の形態1(ストアドプロシージヤ) 0.6 0.6 2.5 2.4 0.3 0.2 5.1 4.0
方式2の形態2(OLTP) 0.4 0.5 2.2 2.1 0.2 0.1 4.5 3.5
方式3(RDA)  1.6 1.2 5.2 4.8 0.4 0.1 8.9 6.9
方式4(分散データベース) 2.2 1.2 5.6 5.2 0.8 0.4 10.3 7.6

注1 応答時間にはデータベースの更新及び参照時間も含まれる。
注2 サーバ処理時間にはデータベースの更新及び参照時間は含まれない。

表6 各方式の横築要素の比較

方 式 同時アクセス端末数 サーバのCPU負荷 システム構築の容易さ
方式1 50台まで可線 高い 難しい
方式2の形態1 50台まで可能 高い やや難しい
方式2の形態2 200台まで可能 比較的低い 難しい
方式3 30台まで可能 高い 易しい
方式4 20台まで可能 高い 難しい

両君はこれらをK氏に報告した。報告を聞いたK氏は、"一方式2の形態1と形態2は応
答時間に大きな差はないが、この二つの優劣をどう考えるか。方式3は方式2に比ベネ
ットワーク伝送の負荷が高いが、これを解決する方法はないか。"と質問した。K氏は経
営トップから情報系システムの樽築を急ぐよう指示されており、四つの方式の選択又は
組合せ、更に段階的構築をすべきか、各事業所のシステム運用管理をどうすべきかなど、
決断を迫られている。


設問1 

[基幹システムの拡張]の中でK氏が考える“営業支援システム"を実現するため、
F君が具体化した点に関する、次の小問に答えよ。

(1)営業担当者の通信費用負担をなくすための方法を、15字以内で述べよ。

(2)表1に示す、東京センタに接続されている営業所端末の応答時間を基に、携帯型
   PCを公衆電話網を介して、2.4kビット/秒で東京センタに接続した場合の応答時間
   の範囲を答えよ。ここで、公衆電話網の伝送効率は0.8とし、アクセスポイントでの
   中縦処理時間は無視する。小数第1位を四捨五入して秒単位で答えよ。

(3)携帯型PCの保有台数が増えるにつれ通信料金の増加が目立ってさた。これを抑え
   るため、M社の既存ネットワークを大きく変えずにどんな対処を検討すべきか。30字
   以内で答えよ。

設問2

M社は情報系システムを全国の事業所に展開するに当たって、通信費用を削減したい。
基幹システムと情報系システムとのネットワークの連携の可能性に関する、次の小問に
答えよ。

(1)情報系システムを構築するに当たり、未定となっているセンタのホスト間の回線を
   決定したい。業務の日次処理が終了した後、30分以内にセンタ間(大阪から東京)の
   データ転送を終えるにはどの回線を選択すべきか。巻末付表10、11から選べ。ここで、
   伝送効率は0.8とする。

(2)F君は情報系システムの構築に当たって、基幹システム用の営業所端末をPCに変更
   してGUIを実現し、同一PCから情報系サーバにも接続したい。この場合、通信費用
   をできるだけ抑えるための接続ルートに関する工夫は何か。50字以内で述べよ。ただ
   し、日中の時間帯では、(1)で求めた回線の利用率にはまだ余裕がある。

設問3

各方式による情報系システムの構築の可能性と、セキュリティ対策に関する、次の小
問に答えよ。

(1)方式2の形態1、2、方式3のそれぞれについて、ネットワーク上のトラフィック
   量と端末台数増設による拡張性に関して、この三つの方式の優劣をそれぞれ60字以内
   で述べよ。

(2)方式4の場合は、情報系サーバに全社データベースを構築し、各事業所に事業所内
   のデータベースを構築する分散データベースとしたい。ISDNパケット交換サービス
   を使って全社データベースの参照、更新をすると、ピーク時間帯に端末応答時間が長
   くなることが分かった。端末応答時間の増加について、ネットワークに関する原因と
   回避策をそれぞれ40字以内で述べよ。

(3)情報系システムには、M社にとって重要なデータがある。ISDNパケット交換サー
   ビスを利用したセキュリティ対策を15字以内で述べよ。

設問4

K氏は情報系システムの構築に当たって、経営トップ向けと事業所の管理耽及び一般
従業員向けとを同時に稼働させることは無理だと考えている。情報系システムの段階的
構築に関する、次の小問に答えよ。

(1)K氏は、経営トップに情報提供するためのシステム構築を優先させる場合に、情報
   系システムの構築方式として、方式3がよいと考えている。表5にあるように、方式
   3は他の方式と比べ、処理結果データがネットワークに多く流れるので応答時間がよ
   くない。方式3が実用上問題となるかどうかについて理由を含め、80字以内で述べよ。

(2)(1)を構築した後に、事業所の管理職までが利用する情報系システムに拡張したい。
   応答時間と拡張性及び構築費用削減を考えた場合、M社が採用すべき方式は四つの方
   式のどれか、その理由を含め80字以内で述べよ。

(3)更に、(2)を構築した後、情報系システムを当初の目的である全国の事業所にいる一
   般従業員向けに拡張するため、応答時間と全国展開の観点からM社が採用すべき方式
  又は方式の組合せはどれか、その理由を含め80字以内で述べよ。

(4)各事業所にいる従業員のシステム運用接術が十分ではないので、K氏は情報システ
   ム部主導で各事葉所に情報系システムを導入する必要があると考えている。しかし、
   情報システム部の要員にも制約がある。そこで、ネットワークを活用して各事業所の
   サーバシステムの運用支援を考えたい。具体的な運用支援方策を三つ挙げ、それぞれ
   30字以内で述べよ。

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