テクニカルエンジニア(ネットワーク)過去出題問題

 平成8年 午後2 問3

最終更新日 2006/02/26
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Tomのネットワーク勉強ノート
 過去問(午後)
   テクニカルエンジニア (ネットワーク)過去問(午後)
     テクニカルエンジニア(ネットワーク)過去問 平成8年 午後2 問3

問3

ネットワークの見直しと再構築に関する次の記述を読んで、設問1〜5に答えよ。

S社は光学機械を販売する企業である。東京に本店を置き、全国8都市(札幌、仙台、新
潟、名古屋、大阪、高松、広島、福岡)に支店をもつ。本店は担当地区別に4営業部に分れ
ている。S社は7年程前から、受注・売上・請求・入金の一連の処理を行う義務システム
(以下、旧システムという)を運用している。
旧システムは、本店に設置したホストコンピュータ(以下、ホストという)と本店及び各
支店の端末(プリンタを含む)とを、図1に示すネットワークで接続する構成になっている。


図1 業務システム(旧システム)構成

本店と大阪支店の時分割多重化装置(以下、TDMという)は、2年前に新規に導入したも
のである。本店と大阪支店との間の高速ディジタル回線には、TDM制御用チヤネル(9,600
ビット/秒)が必要なことと、TDMの多重化効率0.9(低速側回線速度の合計が高速回線速
度の0.9倍まで)を考慮し、伝送速度128kビット/秒のものを用いた。
端末は、端末制御装置(以下、TCEという)を介してボーリング/セレクティング方式
によって、ホストと接続されている。TCEは本店及び各支店に1台ずつ設置されている。
端末数は、本店で計20数台、支店で親模に応じて数台〜10数台である。
端末から業務データの入力と検索を行い、ホストで計算、集計、分類及び作表処理を行い、
結果を端末(プリンタを含む)に出力する。ホスト上のプログラムは、通信制御プログラム、
兼務データ入力検索プログラム、複数のバッチ処理プログラムで構成される。
オンライン業務の運用時間は、通常9〜17時であり、繁忙時には時間延長がある。日次締
め処理は20時に開始し22時までに終了する。翌朝には日計表の出力を行う。土曜日及び日曜
日は業務の運用を行っていない。

【旧システムの問題点】

最近、業務の拡大と多様化に伴い、次のような問題が発生している。

(1)入力データ量の増大に応じて端末の増設が必要であるが、TCEに接続できる端末台
    数に制限があり、既に本店では増設ができなくなっている。TCEの増設には多くの経
    費がかかる。
(2)プリンタの老朽化による故障の多発で、業務処理に支障を来たす場合がある。
(3)ホストのオペレータはバッチ処理のため夜間勤務をしているが、そのため労務費が
    かさむ。
(4)システム構成の信頼性の面で改善すべき点がある。

【本店におけるLANの構築】

一方、本店ではこの1、2年間で、ワークステーション(以下、WSという)、パソコ
ン(以下、PCという)及びLANからなるOAシステムの構築を進めている。LANの制御
方式はCSMA/CD方式であり、ネットワークプロトコルはTCP/IPを採用している。

【社内情報化推進プロジェクト】

このような状況にあって、旧システムとしても次のようにシステムの変更を迫られる
ようになってきた。

(1)入力検索処理を効率化し処理能力を向上する。
(2)PCを利用した業務処理を可能とする。
(3)本店営業部及び支店(以下、部門という)がそれぞれのニーズに応じて、データの
    加工処理をPCでできるようにする(エンドユーザコンピューティング:EUCの推進)。
    そのため、支店にもLANを構築する。
    そこで、社内情報システム(以下、新システムという)を構築することになり、情報
    システム部と各部門から要員を集め、社内情報化堆進プロジェクトが結成された。プロ
    ジェクトには、上記課題のほかに、更に次の2項目が制約条件として課された。
(4)業務に支障が出ていることから、新システムヘの移行は急務である。
(5)S社は大規模なクライアントサーバシステムの構築は未経験であり、開発要員には
    ホストのCOBOLを経験した者しかいないが、外部に発注することはしない。
    プロジェクトリーダのT氏は、プロジェクト会議において、上記課題を説明した。

EUCの推進のために、各種情報(商品情報、納期情報、販売情報及び顧客情報)を部門
に提供することにした。新システムとして、二つの方式案が候補となった。

(第一案)
ホスト上の業務データを部門のWSに移行し、WS、PC利用の分散システムに移行する
(図2)。旧システムのホスト及び端末は廃止する。更に、WSに各種情報を搭載しPCか
ら検索できるようにする。
日次締め処理では、本店のWSに支店の業務データを収集し、処理した結果を支店の
WSに返送する。そのためISDN基本インタフェースを用いる。この回線は本店のWSか
ら各種情報を支店のWSにファイル転送するのにも使用される。ファイル転送にはFTP
を用いる。
第一案のネットワーク構成では、将来、本店経由でなくても直接各支店間の通信が可
能になる。



図2 図2 ネットワーク構成(第一案)

(第二案)
WSとPCを部門に導入し、業務データの入力と検索処理をする。業務終了後、データ
をホストへ転送し、日次締め処理をする。このため、旧システムで使用しているホスト
及びネットワークを接続して使用する(図3)。
第二案では、各撞情報をホスト又は部門のWSに搭載し、PCで検察できるようにする。


図3 ネットワーク構成(第二案)

【新システム構成案選定のための現状調査】

T氏は、プロジェクト要員のU君に、現状のCCP、モデム及びTDMの性能確認、本店
LANの運用管理の現状調査及び支店のLAN構築における問題点調査を命じた。
その結果、CCP、モデム及びTDMは現在使用中の機種で19.2kビット/秒までの通信
速度に対応できることが分かった。
LANについては次の問題点が判明した。本店のLANは、本店の特定の技術者がボラン
ティアで築いたものであり、その技術者が引き続き運用管理を担当している。技術者が
トラブル時に応援を頼まれると、本来の業務に支障を来すことが多い。障害対応は経験
や勘に頼る面が強く、LANアナライザやLAN監視ソフトウェアツールなどはない。した
がって、新システムの構築において、LANの拡張及び運用をこの技術者がそのまま業務
の傍らで行うことは困難である。
支店においては、LAN構築及び構築後の運用を担当できる技術者はおらず、少人数の
支店ではLAN管理者育成に困難が予想される。

【新システムの最終構成案】

T氏は、更に検討を重ね、通信費用は第一案が安価であるが、種々の点で有利な第二
案を採用することにし、次のような新システムの最終構成案を作成した。

(1)新システムは、第二案どおり、ホスト、WS、PCを用いた構成とする。
(2)WSは当該部門の業務データを保持し、日中の処理はWSを用いて行う。
(3)ホストは、従来どおり日次締め処理を行うためにWSとファイル転送を行う。ホス
    トとWSとの間の通信方式は、WSにゲートウェイ機能をもたせ、ポーリング/セレク
    ティング方式を継承する。通信速度は、大阪支店が19.2kビット/秒、その他支店が
    9.600ビット/秒、ファイル転送の伝送効率は0.7とする。
(4)オンライン業務終了時刻と日次締め処理開始時刻を考慮して、日次締め処理データ
    の転送所要時間は2時間以内とする。オンライン業務終了から日次締め処理開始まで
    の時間帯には他のファイル転送はない。日計表は翌朝9時までに出力を終える。
(5)EUCは、PC上に表計算ソフトをのせ、ホスト及びWSの各種情報を検索し、PC上に
    転送する方式にする。各埋情報はホスト上に作成し、一部はWSに夜間自動転送を行
    う。ホスト上の各種情報は22時まで検索可能とする。
(6)業務データと各種情報の種類と流れ及びデータ量を図4と表に示す。


図4 新システムにおける主要な情報の流れ

表 新システムのファイル転送時のデータ量
                                               単位:10^6バイト

データ・情報の転送方向 データ・情報の種類 ファイル転送時のデータ量(1日当たり)
部門WSからホストへ 日次締め処理データ 本店:20、各支店: 8
ホストから部門WSへ 日計表 本店: 6、各支店: 6
販売情報、顧客情報 本店:15、各支店: 15

【新システム開発と運用体制整備】

T氏は、以上の結果に基づいて開発体制を固めるとともに、ネットワークの早期構築
と稼働の安定性を目的とし、LANの全社的な運用管理体制の整備を情報システム部と検
討することにした。EUC推進に向け、各部門にEUC推進リーダを選定し、テスト実施ま
でに教育を完了する。EUC推進リーダには、部門内の指導とLANを含む技術支援を担当
させる。

【新システムのテストと移行計画】

T氏は、U君に新システムのテストと移行の計画を作成するよう命じた。そこでU君は、
まずテスト対象となる本店営業部を一つ選定し、図5のようなテスト計画案を作成した。
U君は、本店の1営業部の移行が完了するのに続いて、まず本店の残りの営業部、続
いて支店の半分程度、最後に残りの支店を移行するという段階的移行案を操業した。T
氏はU君の提案に対し、土曜日及び日曜日の二日間で一斉に移行したいと考え、その可
否について検討を命じた。

テスト計画案(本店の1営業部対象)

(1)事前準備作業
   (ア)本店営業部用WS及びPCの発注
   (イ)本店営業部と事前打合せ
   (ウ)本店営業部に対する新システムの運用説明
(2)テスト準備作業
   (ア)LANの配線工事、電源工事実施
   (イ)ホストの設定(回線定義)
   (ウ)WS、PCのハードウェア、ソフトウェアのインストール
   (エ)WS、PCの撒入と個別動作テスト
   (オ)WSの【 a 】への接続
   (カ)PCのLANへの接続
   (キ)【 b 】
(3)業務システムテスト
   (ア)新システムでの業務処理(旧システムとの併用)
   (イ)EUC利用のテスト
(4)テスト評価(間視点の発見と対策)
   (ア)処理結果の照合
   (イ)応答時間の評価
   (ウ)ファイル転送時間の評価

図5 テスト計画案


設問1

T氏は新システムの最終構成として第二案を選択した。本文中に設定されたS社の状
況に従って、システムの開発・移行・運用などの観点から、第一案と比較しての長所及
び短所を二つずつ挙げ、それぞれ40字以内で述べよ。

設問2

新システムの最終構成案において、大阪支店の日次締め処理データと日計表それぞれ
の転送に要する時間を計算せよ。答えは分未満を四捨五入せよ。

設問3

新システムの最終構成案に関する次の小問に答えよ。

(1)性能及び信頼性の面で、ネットワーク構成上改善すべき点を一つずつ挙げ、それぞ
    れ40字以内で述べよ。

(2)(1)における性能面で改善すべき点の解決策を定量的に(何をどれだけ以下又は以上
    にする)30字以内で述べよ。

(3)(1)における信頼性の面で改善すべき点の解決策を30字以内で述べよ。

設問4

新システムのテストと移行に関する次の小問に答えよ。

(1)本文中の【 a 】、【 b 】をそれぞれ20字以内の適切な字句で埋めよ。


(2)T氏の一斉移行の検討指示に応じて、どのような移行体制をとるべきか、60字以内
    で述べよ。

設問5

U君の調査したS社の現状を蹄まえ、ネットワークスペシャリストの立場から、LAN
の全社的な運用管理体制の整備に関する次の小問に答えよ。

(1)本店における業務分担の体制を30字以内で述べよ。

(2)支店における業務分担の体制とそれを実現するための対策を併せて50字以内で述べ
    よ。

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