テクニカルエンジニア(ネットワーク)過去出題問題平成7年 午後2 問3最終更新日 2004/01/24
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Tomのネットワーク勉強ノート |
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問3
システムの処理方式とネットワーク再構築に関する次の記述を読んで、設問1〜6に答え
よ
M社は製造及び販売を営む会社で、全国に支店や店舗をもっている。東京に本社があり、
全国五つの支店(東京、千葉、横浜、名古屋、大阪)を拠点とし、各支店は複数の店舗を運
営、管理している。千葉市にコンピュータセンタ(千葉センタ)を設置し、これまでに販売、
製造、在庫、出荷、物流などの業務をコンピュータ化している。全国に散在する店舗のPOS
端末から入力される売上げデータは、千葉センタに集約され本社や支店から利用されている。
図1に示す千葉センタの処理には、店舗売上げに関する処理(店舗システム)と社内業務
に関する処理(事務システム)があり、それぞれの処理特性に応じたネットワーク構成とな
っている。店舗システムは専用線とISDNを利用したネットワーク構成をとっている。事務
システムは回線の利用瀕度が比較的少なく、通信事業者が提供するパケット交換網(X.25)
を使用している。システム構成は集中処理の形態をとり、待機/開発系がホットスタンパイ
方式によって本番系をバックアップすることができる。
店舗システムに接続されている磁気ディスク装置(ディスク)には、日々の業務によって
POS端末から入力される販売、製品、物流及び顧客に関する大量のデータが格納されている。
店舗システムでいったん処理が完了したデータは、磁気テープにバックアップされ長期にわ
たって蓄積、保管されている。
M社ではこれら大量に蓄積される業務データを活用し、支店の販売指導に携わる社員向け
に、様々な角度【支店別、店舗別、製品別、出荷別、支払い別(カード利用や現金利用の別
など)】からデータを分析し、市場での製品の販売動向やこれに伴う物流傾向などのきめ細
かな販売戦略の立案及び営業指導に役立てる"情報分析システム"を構築したいと考えてい
る。更に、本社の管理部門にも情報分析システムを利用させ、市場で求められる製品の全社
的な動向を詳しく分析し、その情報を全社の営業活動や生産計画にも反映させ、製品の競争
力を向上させたいと考えている。
情報分析システムの構築に当たっては、店舗システムには大きな変更を加えず、事務シス
テムに機能を追加して要求を実現する。情報分析システムで扱う業務データは過去にさかの
ぼって検索ができ、検索期間は1か月から最大25か月までとする。
情報分析システムは、千葉センタに蓄積されているデータを、各支店の販売指導に携わる
社員や本社の管理部門で働く社員(以下、利用者という)向けに、公開データベースとして
構築する必要がある。公開データベースの利用は日中の勤務時間帯とし、端末の応答時間を
短くして、利用者数を最大200人まで増やす。
本社及び各支店で利用する情報分析システムの1日当たりのデータ件数を表1に示す。支
店の利用者が他の支店の情報を利用することはないが、本社の管理部門は各支店に関するす
べてのデータが利用できるようにする。
図1 千葉センタの概要(現状)
表1 本社及び各支社で利用するデータ件数
単位:件/日
本社 | 東京 | 千葉 | 横浜 | 名古屋 | 大阪 | |
データ | 96,500 | 38,000 | 11,250 | 13,750 | 14,000 | 19,500 |
注 平均データ長は384バイト/件
【情報分析システムの構築案について】
M社は"情報分析システム"のような情報活用システムの構築経験がない。このため、
外部のコンサルタント会社に、最近利用が広がっているクライアントサーバ形態による
処理方法を含むシステム構築のコンサルティングを委託した。
コンサルティング結果として、表1に示すデータを千葉センタに集中して配置する方
法(集中方式)と、各支店や本社の管理部門に分散して配置する方法(分散方式)の2
通りの構築素案が提示された。概要は次のとおりである。
(1)集中方式
@ 利用者は、端末からネットワークを介して千葉センタにある大型汎用コンピュータ
で情報検索や分析処理を行い、結果を得る。
A 情報分析システムの追加に伴って、千葉センタのコンピュータ資源は見直しが必要
となる。
B アプリケーション開発は、従来どおりセンタの情報システム部門が主体で行う。
C 利用者が独自に公開データベースの検索や分析、加工、編集ができるようにするた
め、利用者に対するインタフェースを共通データフォーマットとして作成し個別ニー
ズに対応する。
D 関係データベース管理システム(RDBMS)を利用し、多様な分析ができるように
する。
E GUI (Graphical User Interface)を利用するためにパソコンを本社及び各支店に導
入し、センタの大型汎用コンピュータとの通信はパソコンのエミュレータ機能を使用
する。SQLの利用も検討する。
(2)分散方式
利用者は、分析に使用するデータをそれぞれの部署で受け取り、情報分析を行う。システ
ム構成は、大型汎用コンピュータ、ワークステーション(WS)を利用したセンタサーバ及
びそれぞれの部署に配置する部署内データベースサーバに分かれ、それぞれ次の役割をもつ。
@ 大型汎用コンピュータ
店舗システムから業務データを抽出し、利用者の情報検索や分析を可能にするため
共通データフォーマット化を行い、センタサーバに転送する。
A センタサーバ
大型汎用コンピュータから共通データフォーマット化したデータを受信し、本社や
各支店別に送信データの内容を要約したファイル(要約ファイル)を作成する。表1
に示す件数のデータと作成した要約ファイルを、それぞれの部署内データベースサー
バに転送する。
B 部署内データベースサーバ
センタサーバからデータと要約ファイルを受信し、情報検索及び分析用データベー
スを構築する。
M社ではこの情報分析システムの構築及び運用について、コンサルタント会社からの
素案をもとに、具体的にどのようなシステム設計をすべきか、現状システムを踏まえて
詳細に検討することになった。
【二つの案の実現方法について】
M社の情報システム部長であるK氏は、情報分析システムの構築は集中方式と分散方
式のいずれが有利か、具体的にシステム設計レベルまで詳細化して検討する必要がある
と考えている。そこで、センタシステムに詳しいA君と業務経験があり分散データベー
スの勉強をしているB君に対し、コンサルタント会社の素案をもとに、それぞれ調査及
び検討を行い、システム設計案を出すよう命じた。
A君は集中方式を、B君は分散方式を担当した。両君の調査及び検討が進み、システム
設計案がおおむね固まったところで、K氏は二人に説明を求めた。
K "さて、二人とも設計案ができたと思うが、その前にそれぞれの方式の利点と欠点から
話しを聞きたいんだ。A君、集中方式は何かいいところがあるかね。"
A "はい。利点としては、利用者はうち(情報システム部門)が開発したアプリケーショ
ンが利用できますし、分散処理によるアプリケーションの重複開発が避けられると思
います。
また、利用者はシステムの運用管理にも煩わされることがありません。"
K "集中方式の悪いところは、どんなことが考えられるの。"
A "店舗システムは昼と夕方にピークがありますので、情報分析システムはセンタの稼働
状況によって利用者の応答時間が影響を受けます。
また、うちだけで、どこまで利用者の個別のニーズに対応したアプリケーション開
発がやれるのか、心配があります。"
K "うん。じゃ、市場に流通しているソフトウェア製品を使う方法はどうだね。"
A "流通ソフトウェアパッケージは、一般に分散方式に比べると利用できるものは多くあ
りません。しかし、今回の情報分析システムの構築でみますと、利用できるものはど
ちらの方式でも大きな差がありません。集中方式では、各支店や本社からネットワー
クを介して利用することになるため、ネットワークの信頼性が高く、回線速度が充分
であれば集中方式で構築できると思います。ネットワークのところはまだはっきりは
していませんが、このような(図2に示す)システム構成で実現できると思います。
また、ディスクの増設に伴って、大型汎用コンピュータのチャネル装置やメモリの
増設が必要ですが 通信制御装置にはまだ余裕があります。"
図2 集中処理のシステム設計(案)
K "なるほど。B君のほうはどうだね。"
B "はい。分散方式は大型汎用コンピュータの稼働状況には左右されませんし、EUC
(End User Computing)を前提にすれば、利用者のニーズに合ったデータ利用が可能
です。また、様々な流通ソフトウェアパッケージも利用できます。"
K "なるほど、いいね。しかし、いいところばかりなのか。"
B "いいえ。問題もあります。これまでは、うちがアプリケーションを提供してきました
が、EUCを推進するためには【 a 】が重要となりますので、【 b 】を充分に投入
して、計画的に実行しなければならないと思います。"
K "それはなかなか大変だぞ。"
B "でも、WSやパソコンによるクライアントサーバ形態の構築事例は幾つもありますし
EUCもうちが主体となって推進すればなんとかなると思います。"
K "君の考えたシステム設計案はどれかね。"
B "はい。これ(図3に示す)です。ネットワークの検討は不充分ですが、LAN-
WAN-LAN経由で大型汎用コンピュータと接続します。LAN制御装置にはIPアドレ
スが割り当てられるものを導入し、ルータを経由して大型汎用コンピュータにアクセ
スします。情報分析システムだけを実現するには間遁はないと思います。ただ、いま
の端末制御装置に接続されている事務システムの端末がだいぶ古くなっていますの
で、パソコンを事務システムの端末としても利用し、図3のパソコンからルータを経
由してセンタサーバにアクセスしたり、通信サーバを経由して事務システムにもアク
セスしたりできるようになるといいのですが。"
K "何か問題があるのか。"
B "まだ、詳細な見積りができていませんが、パソコンのエミュレータ機能でセンタとつ
なぎ、同時にTCP/IPで部署内データベースサーバに接続すると、マルチプロトコル
の同時利用となりパソコンのOSのメモリ制限を超えてしまう可能性があります。"
K "うん。これは今後につながる問題だから、別途検討することにしよう。"
図3 分散処理のシステム設計(案)
K氏はこれまでの両君の説明から、分散方式のほうが利用者にとって機能上有利であると
思った。しかし、M社が利用しているコンピュータメーカのP社から、クライアントサーバ
形態に対応したソフトウェアの発表があった。このソフトウェアは、クライアントに市販の
安価なパソコン機種が利用でき、しかも様々な流通ソフトウェアパッケージからSQLを使っ
て、M社の大型汎用コンピュータのデータにアクセスができるようになるという。
【二つの案の移行及び運用について】
K氏は両君の調査によって、二つの案の実現方法についてはある程度理解できたが、
情報分析システムの移行及び運用についても検討を進めたい。そこで、引き続きA君に
集中方式への、B君に分散方式への移行及び運用についての検討を指示した。両君はそ
れぞれ検討した後、K氏に次のような説明をした。
A "アプリケーション開発は、待機/開発系を使って行います。システム移行については、
支店などを一斉に行うには要員の配置上無理がありますので、一つの部署ごとに移行
計画を立てて実施したほうがいいと思います。また、共通データフォーマット化によ
って、利用者の個別ニーズにはかなり対応できることが分かりました。"
K "それはよかった。"
A "また、障害時の影響が大きいディスク障害に対しては、店舗システム側のデータから
回復する方法で対処できると思います。しかし、各部署で利用者が増えて200人近く
なると、ディスクに対するアクセスが集中するようになります。こうなると【 c 】
ができて性能の劣化が生じると思われます。"
K "何かいい解決策はあるのか。"
A "はい。最近、ディスクの並列検察ができる並列データ検索プロセッサが発表されまし
たので、これを導入したいと思います。"
K "性能の問題は解決できそうだが、費用面がどうかだな。B君のほうはどうだ。"
B "はい。A君と同じく、大型汎用コンピュータ側のアプリケーション開発は、待機/開
発系を使って行います。新規に導入するWSやパソコンの導入及び移行作業は、うち
が主体となって、各部署に並行的に行うことができます。センタサーバのバックアッ
プについては、特に障害発生時の影響が大きいディスクに対し、【 d 】をとる必要
があると思います。
また、システムにホットスタンパイ方式が適用できるようにしたほうがよいと思い
ますので、現状システムとWSやパソコンとの整合性を検討したいと思います。"
K "うん。分かった。"
B "ところで気になりますのは、利用者の一部から部署内のデータベースサーバにあるデ
ータだけでなく、センタサーバにもアクセスしたいという声があることです。"
K "他の支店や全体の状況もみたい、というわけか。"
B "そうです。こうした要求があるとセンタサーバの能力やメモリの増設も検討する必要
があると思います。
また、運用で心配していますのは、本社や支店でWSの運用や障害に対する作業が
必要となり、このための要員育成に時間がかかることです。"
K "そうだな。ところで、セキュリティの件なんだが、社内向けの公開データベースでは
あっても、情報セキュリティに村する配慮が必要になる。情報の必要がない者にアク
セスさせないようにし、特にデータの保護には充分に配慮したいんだ。"
K氏はその後、両君のシステム設計案をもとに、表2の利用条件でシステム価格の見
積りをさせた。その結果、表3に示すように、二つの案は価格面では大きな差がなかっ
た。K氏は二つの処理方式の優劣を見極めるには、ネットワーク費用、性能、構築の容
易性などの点から検討し、本社及び各支店の利用者数や利用頻度によるネットワーク費
用や、分散方式での運用管理にかかわる要員の負荷が、ポイントになると考えた。
表2 情報分析の利用条件
(1)集中方式における本社及び各支店の1日当たりの利用者は平均7人で、1か 月間で勤務日数(23日)分利用する。1回の情報分析では、センタとの通信開 始〜利用者メニュー表示〜情報分析の指示〜結果表示〜通信終了に、通信量に 換算して480パケットが必要である(1パケットで384バイト運ぶものとしてよ い)。 また、利用者の操作時間やセンタでの処理時間を合わせ35秒が必要である。 (2)分散方式では、毎日(1か月は31日間)発生するデータを夜間(19時から深 夜にかけて)にあらかじめ本社及び各支店にある部署内データベースサーバに 転送する。センタサーバから部署内データベースサーバにデータ転送する際、 要約ファイルを追加して転送するため、データ件数に換算して10%増加する。 (3)情報分析を利用する時間は9時から18時までである。 |
表3 情報分析システムの価格見積り
単位:万円/月
ハードウェア | ソフトウェア | サービス | 人件費 | 合計 | |
集中方式 | 254 | 30 | 26 | 11 | 321 |
分散方式 | 73 | 26 | 87 | 129 | 315 |
注1 ハードウェア、ソフトウェア、サービスは月額レンタル費用に換算してある。
注2 人件費は、構築及び運用に必要な要員数と月当たりの作業量から算出してある。
設問1
問題文のK氏との会話の中の【 】に入れるべき適切な字句をそれぞれ15字以内で
述べよ。
設問2
K氏から質問が出ている。K氏の問いに答えよ。
集中方式は本社及び各支店それぞれで、1日に平均7人が利用するが、将来は大幅な
増加が見込まれる。このため、個別ニーズの増加や大量データの検索処理の発生を考慮
し、パソコンと大型汎用コンピュータのRDBMS間の通信量をあらかじめ削減する方法
を講じる必要がある。
パソコン側でSQLを使用する場合の留意事項を一つ挙げ、40字以内で述べよ。
設問3
事務システムの現状ネットワーク設備で、支店別の売上げ推移について情報分析を行
う場合の通信費用を試算したい。本社及び各支店で、表1のデータと表2の利用条件に
加え、次の集件で情報分析を行う場合、集中方式と分散方式それぞれの1か月の通信費
用を求めよ。
(条件)
@ 本社及び各支店で1日に平均7人が2回の情報分析を行う。
A ロングパケットを使用する。
B 各データごとに付加されるプロトコルヘッダは、上り/下りとも10バイト。
C データは1パケットで運ぶ。
D データの受信の都度、確認応答が返され、上り下りともに各20バイト。
設問4
図3の分散方式で1台のパソコンから事務システムと情報分析システムの両方にアク
セスしたい。しかし、パソコンがマルチプロトコルをサポートするとパソコンのメモリ
容量を圧迫するため、対策が必要である。この解決策を40字以内で述べよ。
設問5
集中方式と分散方式では、データ保護のためのセキュリティ対策に違いがある。集中
方式に比べて分散方式に特有なデータ保護対策を三つ挙げ、それぞれ30字以内で述べよ。
設問6
表3に示すように二つの処理方式は費用面で大きな差がなく、集中方式と分散方式の
ネットワーク費用の月額差も6万円程度であることが分かった。情報分析は、さかのぼ
って検索するデータが1か月から25か月までと幅があり、応答時間も一定ではない。そ
こでK氏は、ネットワークスペシャリストでセンタシステムのRDBMSから利用者パソ
コンまでの範囲を担当しているC君に、@ネットワーク費用、Aネットワークシステム
の構築、Bネットワークシステムの移行及び運用について意見を聞くことにした。次の
問いに答えよ。
(1)C君の立場から情報分析システムの構築について二つの方式の優劣を比較し、上述
の@からBについてそれぞれ60字以内で結果を説明せよ。
(2)あなたがC君であるとして、情報分析システムの構築に関しK氏の総合判断(集中
又は分散)に役立つよう提言したい。あなたの経験から上述の@からBの結果を踏ま
え、理由を含め120字以内でK氏にあなたの意見を説明せよ。
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