テクニカルエンジニア(ネットワーク)過去出題問題

 平成12年 午後1 問4

最終更新日 2006/02/28
webmaster@tomnetwork.net

Tomのネットワーク勉強ノート
 過去問(午後)
   テクニカルエンジニア (ネットワーク)過去問(午後)
     テクニカルエンジニア(ネットワーク)過去問 平成12年 午後1 問4

問4

電子帳票システムの導入に関する次の記述を読んで、設問1〜4に答えよ。

X社は、計算センタを東京都内に置き、利用会社に対して財務会計計算サービスを提供している。利用会社は8社で、東京に7社、大阪に1社ある。
財務会計計算サービスには、会計データによる法定帳簿の作成が含まれている。従来は、4種類の法定帳簿をマイクロフィルムに印刷し、利用会社に配布していたが、最近、法令が変更になり電子帳票が認められたので、市販されている電子帳票システムの導入を検討することになった。
この電子帳票システムは、従来の帳票印刷に替えて、サーバ上の磁気ディスクに帳票データを蓄積し、サーバに接続されたパソコンから検索、照会でき、必要に応じてプリンタに出力できるシステムである。サーバからパソコンへのデータ伝送は、ページ単位に行う。
まず、X社企画担当者が、現状のコストと導入後の概算コストを比較した。
現在、X社はホストコンピュータ(以下、ホストという)を稼働させて帳票データを作成し、磁気テープ(以下、MTという)に格納して印刷業者に渡している。印刷業者は、全利用会社で一月当たり216万ページをマイクロフィルムに印刷し、X社に納品している。X社は印刷業者に年間約5,000万円を支払っている。一方、電子帳票システムのハードウェア及びソフトウェア購入費用が約6,000万円、ほかに必要なのはネットワーク費用だけなので、総費用が低下すると見込まれた。
そこで、企画担当者は、ネットワーク担当者であるK君に対し、ネットワーク設計とネットワーク費用の見積りを依頼した。以下は、一週間後の、K君と上司のT課長の会話である。

T課長 : K君、電子帳票システムのネットワーク設計に関する、君の考え方はまとまったかね。 
K君 : はい、ネットワーク構成は、図のとおりと考えました。 
T課長 : ホストからサーバに帳票データをもってくる部分の設計について説明してほしい。 
K君 : 最初は10Mビット/秒のインタフエースをもつハブを利用し、FTPによる
ファイル転送を考えたのですが、計算の結果、毎月の伝送時間が合計
【 a 】時間となってしまい、今後のデータ量増加に対応できるかどう
か心配でした。伝送時間は、1ページ60,000バイト、また、ホストとサー
バ間の伝送効率を0.4として計算しました。 


図1 電子帳票システムのネットワーク構成(案)

そこで、100BASE-TX用の機器の見積り(表参照)も取ったところ、ハブの値段は20万円しか違わないので、100BASE-TXとした方がよいと考えました。 

表 通信機器の見積もり

機器 数量 単価 合計価格
スイッチングハブ  1 400,000円 400,000円 
ルータ 16 30,000円 480,000円

T課長 : 
このシステムの運用時間帯を考えると、昼間はサーバとパソコン間の通信が
行われ、夜間はホストからサーバへのFTPによるファイル転送が行われる。
ホストからサーバへのFTPは、LANをほかに利用していない、言わば“専
有状態"で利用するから、伝送効率はもっと【 @ 】なるとは思うが、
結論はそれでよい。ところで、ホスト側に100BASE-TXのインタフェース
があることは、確認しただろうね。 

K君 : 
はい、確認しました。 

T課長 : 
数年前、ホストがLANインタフェースをもっていないころは、サーバヘの
大容量データの移動はMTで行ったものだ。現在ではデータ伝送が当たり
前になったが、一度、データ伝送とMTのコスト比較をしてみたいと考え
ていた。比較するとどうなるのだろうか。 

K君 : 
MTの場合は、MT装置を購入する必要がありますが、【 A 】に比べ
て、MT装置の方が高価です。その上、オペレータによるMTのハン
ドリングが必要です。毎月MT300本分の帳票データがありますから、ジョブの実
行時間は約20時間となります。その間ずっとオペレータがついているわけ
ではありませんが、実働時間を5時間として、オペレータの1時間当たり
の人件費を4,000円とすると、年【 b 】万円です。 

T課長 : 
了解した。MTの選択はないね。
次に、利用会社との通信についてだが、【 B 】が図にない。省略した
のかね。 

K君 :
 いえ、図のルータはその機能をもっているのです。 

T課長 : 
利用会社との通信では、【 C 】を考えていないようだね。 

K君 : 
この業務の性格上、障害時は回復を待てますので、不要です。 

T課長 : 
それは分かった。しかし、エコノミ専用線の選択はどうだろうか。確か、ク
ライアントの利用時間は、各社とも1日1回、日中25分の接続だったね。
そうすると、ISDN基本インタフェース(以下、ISDNという)の方が安い
はずだが。毎月の利用料金だけでも、今比較してごらん。 

K君 : 
東京の1社について比較します。ISDNについては、センタ側も利用会社側
もそれぞれ1回線加入するとして計算します。15km以内であれば、64kビ
ット/秒のエコノミ専用線は月額【 c 】円です。ISDNの方は、1日25
分、毎月20日として、通信料金の従量部分は【 d 】円、それに回線
使用料を足して【 e 】円ですから、【 D 】の方が安いですね。 

T課長 : 
大阪については、違いが更に【 E 】なるはずだ。以上から料金上は
【 D 】が有利だが、それで問題がないか、実績があるかどうかを、電
子帳票システムの販売業者に確認しておきなさい。また【 F 】につ
いても、TAの機能があるかどうかなどを再確認する必要がある。次に、セ
キュリティに関してだが、ホストには重要なデータが存在するので、不正ア
クセスを防止する対策が必要だ。ところが、この図を見ると、パソコンの利
用者が技術力をもっていれば、ホストの帳票データ以外のデータを指定して、
FTPでファイル転送できるように見える。その対策はどうしているの。 

K君 : 
考えていませんでした。 

T課長 : 
まず、FTPの起動は【 G 】側で行うようにする。それからもったい
ないようだが、ホストとスイッチングハブの間にルータを置いて、IPフィ
ルタリング機能で、【 G 】から【 H 】へのFTPだけしかでき
ないようにすること。また、その設定のチェックを情報システム部内の定期
チェック項目に入れておくように。ところで、ISDNにした場合は、サーバ
の帳票データを他人が別の場所からアクセスできてしまうおそれがある。パ
スワードによるチェックはあるにしても、ルータの機能で発信者番号をチェ
ックするか、ISDNのグループセキュリティ機能を利用するか、どちらかに
するように。 

K君 : 
分かりました。 

T課長 : 
今日出た検討項目が解決したら、ネットワーク設計とネットワーク費用の見
積り、及びそのほか調査したことをレポートにして、企画部門に送っておく
ように。ところで、この電子帳票という仕組みは、ほかの帳票にも応用でき
ないものかね。 

K君 : 
今回の会計データでは、電子帳票システムのコストの比較対象が、マイクロ
フィルム作成費用であり、効果の大きいケースでした。ほかの帳票の場合は、
社内で印刷して利用会社に配布していますので、比較対象がプリンタの購入
費、用紙代、(ア)などになります。 

T課長 : 
最近は、(イ)電子帳票システムのコスト項目のうち、ソフトウェア以外の部分
が低価格化しているので、社内で印刷している全帳票を電子帳票システムに
乗せることによって、コストが下がる可能性があると思う。検討の上、一度
レポートするように。効果があれば、企画部門に逆提案することにしよう。 


設問1 

本文中の【 @ 】〜【 H 】に入れる適切な字句を答えよ。

設問2 

本文中の【 a 】〜【 e 】に入れる適切な数値を答えよ。

エコノミ専用線については巻末付表5を、ISDNの料金については、巻末付表2、3を参照のこと。

設問3 

本文中の下線(ア)、(イ)は具体的に何か。二つずつ挙げ、それぞれ10字以内で答えよ。

設問4 

全帳票を電子帳票システムの対象とするため、通信回線の必要容量を計算するには、ページごとのデータ量以外に、何を調査すればよいか。
20字以内で述べよ。

Tomのネットワーク勉強ノート
 過去問(午後)
   テクニカルエンジニア (ネットワーク)過去問(午後)
     テクニカルエンジニア(ネットワーク)過去問 平成12年 午後1 問4